食物アレルギーでは、成長とともに抗原に対して反応しなくなる免疫寛容が成り立ちます。これは腸の働きが大きいです。しかし同じ粘膜でも鼻や眼の粘膜では寛容が起こりづらいのです。花粉症は抗原が入ってくれば入ってくるほど、抗体の値つまりラストスコアは上がります。ですからお嬢さんは治療をしなければ中学生、高校生になる頃、ラストスコアはたぶんもっと高くなるでしょう。高くしないためには防御しかありません。アレルギー症状は異物が入ってきて身体が抗体を作って起きますから、入ってこなければ抗体はできません。ですから花粉の飛ぶ時期には通学時に眼鏡をかけたりするなどして、花粉が入ってこないようにする。入ってくる抗原が少なければラストスコアは上がらず、重症化することもありません。そしてお嬢さんが成長する頃には、いい療法が出てくる可能性があります。それまで、とにかく重症化させないことが大切です。
いろいろな面で高度文明になればなるほどアレルギー疾患は増えています。スナック菓子だけで花粉症が悪くなるとも思えないので、多少は許してあげてもいいのではないかと思います。ただ食生活では、どんな病気についてもいえるのですが、バランスよく食べることが大切です。肉、魚、野菜というように、多種類の食品を満遍なく食べる。そうすればスナック菓子を食べる回数も減るでしょう。
それは大丈夫です。ステロイド点鼻薬は局所のみに作用し、使い続けても血中濃度はほとんどゼロのままです。ステロイド吸入薬も飲むステロイドと比べるとそれほど血中濃度は上がりません。ですから安心して一緒に使ってください。子どもの場合も同じです。
過去20年ほどのわれわれの調査によれば、スギ花粉症だけという患者さんは全体の10%ぐらいで、スギ花粉症の患者さんの9割は他のアレルゲンにも感作されていたり、症状が出たりします。ですからほぼ一年中何らかのアレルゲンに反応してしまうわけです。本当にスギだけの花粉症かどうか、きちんと調べて、アレルゲンの回避などを行う必要があります。スギだけの花粉症の場合でも、患者さんはタバコの煙や急な温度変化などに過敏なので、鼻がジクジクしやすいということもあります。しかしこれはとくにひどくない限り、清浄で湿った空気を肺へ送り込むための、人間にとっては必要不可欠な生理作用であることを認識していただきたいと思います。
これは大変難しいテーマです。今、薬を使わない療法の情報が多く出ています。トマトのリコピンや乳酸菌が花粉症にいいとか、ポリフェノールがいいとか。確かに研究室レベルで、アレルギーを起こしにくくする細胞が増えることがある程度わかってきており、長期にずっと続ければ症状の軽減が期待できるということです。明日からヨーグルトを何個も食べれば花粉症がおきなくなるということではありません。アレルギー治療の根本は抗原の除去です。自分の生活習慣を見直すのも大事です。つまり、ある程度健康な身体を手に入れることです。規則正しい日常生活、これはアレルギー疾患だけではなく成人病などいろんな病気に対処するうえで基本です。朝は早く起きて、夜は早く寝る、食生活も昔のように大豆や魚などのたんぱく質のおかずを中心としたご飯、これは生活習慣病の予防にもなる大事なことで、それに適当な運動と十分な睡眠があれば一番身体にいいと思います。
全員の人に耳鳴りが出るというわけではありません。年を重ねると耳鳴りが出やすいので、それだけで耳の病気と捉えるのは難しいです。耳鳴りは原因が分かっていないので、それに対する治療は非常に難しく、ほとんど解明できていません。耳鳴りとうまくつき合える人もいますが、日常生活に差しつかえる人は心療内科で睡眠の妨げを取ってもらうなど、コントロールを促すことがあります。突発性難聴では、難聴は治っても耳鳴りが残る患者さんが多く、なかなか難しいです。耳の病気の随伴症状として耳鳴りはつきものなので、治療の目標が病気のコントロールなのか耳鳴りのコントロールなのかを考えるのが大事だと思います。
治療の第一は抗原の除去・回避です。このためには自分が何に対してアレルギーなのかを確実に知っておくことが重要です。抗原は、血液検査、皮膚試験、症状の出方で診断できます。具体的には、抗原がダニでしたら、こまめな掃除、除湿、防ダニふとんや防ダニカバーの使用で、ダニの量を減らすことです。花粉には、テレビなどで花粉情報を見て、飛散量が多いときは外出を避ける、マスクやメガネを使うなど、花粉を避けるさまざまな方法があります。治療に使われる薬には、肥満細胞安定薬、ケミカルメディエター受容体拮抗薬、ロイコトリエン拮抗薬、局所または経口のステロイド剤などがあります。特異的免疫療法は、抗原に対して体を反応しにくくするもので、今のところ唯一の根本的な治療法です。薬を長く飲まなければならないような場合は、手術も考えます。
患者さんの数はとても多くなっています。圧倒的に多いのはスギ花粉症ですが、これは年によって花粉の飛ぶ量が大きく違います。鼻炎に関しては、鼻に噴霧するステロイドがとてもよく効きます。内服薬しかなかった以前に比べるととてもコントロールが楽になりました。また、抗ヒスタミン剤も、昔は飲むと眠けが出ましたが、新しい世代の抗ヒスタミン剤はそういう作用も少なくて飲みやすくなりました。抗ヒスタミン薬以外にも抗ロイコトリエン薬が鼻づまりによく効きます。
アレルギー性鼻炎とかかわりが深いのは、アレルギー性副鼻腔炎です。これはアレルゲンが副鼻腔の粘膜に作用して起きる副鼻腔炎で、アレルギー性鼻炎の治療をきちんとすればよくなることが多く、この病気にはとくに手術の必要はありません。
ぜんそくの人に多いのが好酸球性副鼻腔炎で、難治性です。初発症状として嗅覚障害を起こしやすく、しばしば好酸球性中耳炎を合併します。とくにアスピリンぜんそくといわれる解熱鎮痛薬ぜんそくの人に多いことがわかっています。治療は鼻をスプレーしてきれいにする、鼻洗浄をするといった局所療法、薬物治療、そして手術があります。手術は以前は外から切開する大がかりなものでしたが、今は内視鏡を使って鼻の中から手術します。
好酸球性中耳炎は、アスピリンぜんそくの患者さんに多く、貯まる液体は滲出性中耳炎のようにサラサラしたものではなく、粘度の高いニカワ状です。吸引することもできず、鉗子を使って取ったりします。取った後ステロイド薬を入れたりして治療しますが、難治性でなかなかよくなりません。放置しておくと次第に悪化し、聴力が落ちていきます。とくに重症の場合は入院していただき、ステロイドの全身投与を行うこともあります。今、耳鼻科医も患者さんももっとも悩まされている耳鼻咽喉科の疾患のひとつです。
それはまずありません。小児科レベルの好酸球性中耳炎はまだみつかっていないんです。小児の一側聾(いっそくろう)で一番多いのはおたふくかぜの後遺症です。無症候性のおたふくかぜでも起きます。おたふくかぜのウイルスは内耳の蝸牛を選択的に傷害することがあるんです。それもどういうわけか両側ということはなく、片側だけまったく聴こえなくなる。おたふくかぜによる難聴は一般的には聾型で、残念ながらほとんど回復しません。